2022年12月21日水曜日

12月色々

雪が降ったり晴れたり、寒くなった花巻です。

昭和20年の12月、花巻で過ごす1年目の光太郎、東京育ちで寒かったでしょうね。

15日の光太郎ランチ、冬モード全開の日でした。



今回も盛りだくさんのおかずでした。

これから外は寒いですが、インフォメーションコーナーは暖かいので、予約してそこで食べるのもいいかもしれません。予約ははなまき西南道の駅にどうぞ。

また、高村光太郎連翹忌運営委員会の小山先生からからこんなプレゼントをいただきました。紅茶です。

光太郎はレモン味。宮沢賢治はリンゴ味。今度の例会でみんなで味見をしたいと思います。楽しみです。

記念館では共同企画展を開催しています。期間は短いですが、この詩を読むと、光太郎が身近に見た開拓の人々の苦労や意気込みが伝わってきます。

冬休みに是非お立ち寄りください。


   開拓に寄す

000
 
岩手開拓五周年、
二万戸、二万町歩、
人間ひとりひとりが成しとげた
いにしへの国造りをここに見る。
 
エジプト時代と笑ふものよ、
火田の民とおとしめるものよ、
その笑ひの終らぬうち、
そのおとしめの果てぬうちに、
人は黙つてこの広大な土地をひらいた。
見渡す限りのツツジの株を掘り起こし、
掘つても掘つてもガチリと出る石ころに悩まされ、
藤や蕨のどこまでも這ふ細根(ほそね)に挑(いど)まれ、
スズラン地帯やイタドリ地帯の
酸性土壌に手をやいて
宮澤賢治のタンカルや
源始そのものの石灰を唯ひとつの力として、001
何にもない終戦以来を戦つた人がここに居る。
 
トラクターもブルドウザも、
そんな気のきいたものは他国の話、
神代にかへつた神々が鍬をふるつて
無から有(う)を生む奇蹟を行じ、
二万町歩の曠土(あかつち)が人の命の糧(かて)となる
麦や大豆や大根やキヤベツの畑となつた。
さういふ歴史がここにある。
 
五年の試煉に辛くも堪へて、
落ちる者は落ち、去る者は去り、
あとに残つて静かにつよい、
くろがね色の逞ましい魂の抱くものこそ
人のいふフランテイアの精神、
切りひらきの決意、
ぎりぎりの一念、
白刃上(はくじんじやう)を走るものだ。
開拓の精神を失ふ時、002
人類は腐り、
開拓の精神を持つ時、
人類は生きる。
精神の熱土に活を与へるもの、
開拓の外にない。
 

開拓の人は進取の人。
新知識に飢ゑて
実行に早い。
開拓の人は機会をのがさず、
運命をとらへ、
万般を探つて一事を決し、
今日(けふ)は昨日(きのふ)にあらずして
しかも十年を一日とする。
心ゆたかに、
平気の平左(へいざ)で
よもやと思ふ極限さへも突破する。
開拓は後(あと)の雁(がん)だが
いつのまにか先の雁になりさうだ。
 
開拓五周年、
二万戸、二万町歩、
岩手の原野山林が
今、第一義の境(さかひ)に変貌して
人を養ふもろもろの命の糧を生んでゐる。

(高村光太郎連翹忌運営委員会ブログからお借りしました。)

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