2019年10月28日月曜日

秋の祈り

 みなさんこんにちは
高村光太郎記念館です。
台風で記念館周りの樹も葉が枯れたり無くなったりしましたが、残った葉が色づいてきました。
抜けるような青空に紅葉が映えますね
先日、きつねが訪問してきました。
私は初めてです。
朝でしたが、居合わせたお客様は、逃げられないようにそっと写真を撮っていました。
これも森の楽しみですね。
でも野生動物ですから、くれぐれも近づかないように、

今日は、光太郎の詩で「秋の祈り」を紹介します

      秋の祈り

秋は喨喨(りょうりょう)と空に鳴り
空は水色、鳥が飛び
魂いななき
清浄の水こころに流れ
こころ眼をあけ
童子となる

多端粉雑の過去は眼の前に横はり
血脈をわれに送る
秋の日を浴びてわれは静かにありとある此を見る
地中の営みをみづから祝福し
わが一生の道程を胸せまって思ひながめ
奮然としていのる
いのる言葉を知らず
涙いでて
光うたれ
木の葉の散りしくを見
獣(けだもの)喜喜としてとして奔(はし)るを見
かくの如き因果歴歴の律を見て
こころは強い思愛を感じ
又止みがたい責(せめ)を思ひ
堪へがたく
よろこびとさびしさとおそろしさとに跪(ひざまず)く
いのる言葉をしらず
ただわれは空を仰いでいのる
空は水色
秋は喨喨と空に鳴る
    (大正3年作「道程」の巻末に収められている)