2020年11月23日月曜日

秋の企画展「光太郎とホームスパン」最終日

高村光太郎記念館です。

企画展「光太郎とホームスパン」

今日が最終日です。

光太郎ファン、ホームスパンファン、花巻ファン、沢山の方々に来訪していただきました。

ありがとうございます。

中々、見る事がない、イギリスのホームスパンは、今回の目玉であり、来館していただいた方の、1番の注目の的でした。

私達職員も、改めてこのブランケットを見て、100年弱経過しているにも拘らず殆ど退色せずに見ることが出来たことは大変貴重な時間でした。

特に鮮やかな青の色は、きっとこの毛布をねだった智恵子の心を動かしたのでしょう

光太郎晩年の写真もいくつか展示してありました。

よく見ると、ひざ掛けにして使用しているのがわかります

本当に大事にしていたのですね。

もう4時半になると日没ですから、5時に記念館を閉めて帰るころは、こんなに真っ暗です。

光太郎も、この電灯がない日々をここで暮らしましたが、夜は月や星の明かりを丁寧に見ています。

また、天体図も、取り寄せ、秋の夜長を星や月を見て楽しんでいます。

人生の楽しみ方、光太郎に学ぶことが沢山ありますね


 

2020年11月13日金曜日

11月 光太郎ランチ

こんにちは、高村光太郎記念館です。

2回目の光太郎ランチ、いよいよ11月15日です。

今回もメニューを見るとワクワクしてきます

ご飯が  栗ごはんと白六穀ごはん

光太郎風キャベツの牛肉巻き

鮭と季節野菜の黒酢炒め

風呂吹き大根

チーズ入り干柿の天ぷら

塩麹入り玉子焼き

サツマイモと豆のバター炒めレモン風味

イチジクの甘露煮と柿

お新香

実に美味しそうです。     


記念館からは、ランチのカード、裏に光太郎の日記が抜粋されています

そして箸袋は、今月は、当時沢山いたという兎と光太郎が大好きなサツマイモのイラストです

光太郎ランチNO2 より

22年11月28日

日はてりながら雪がちらほらする。うすく積もっている。なかなか寒し。毛布をかぶってあるく。夜、牛肉、聖護院、キャベツ煮物、シュークルート こたつ、読書新聞等

ここにある、毛布は今企画展示中の毛布と思われます。

まだの方、23日までです。
 

2020年11月11日水曜日

ブランデンブルグ

こんにちは

高村光太郎記念館です。

今日は「ブランデンブルグ」という詩を紹介します。

昭和22年10月31日

詩頭にあり。日没頃坂上へ散歩

昭和22年11月5日

「ブランデンブルグ」を書く。夜11時まで書いている。バッハと此處の環境と10月31日の天気とを一緒に書いたもの。(筑摩書房、高村光太郎全集から抜粋)

同じ景色を眺めている自分に感激です

少し長いですが、みなさんも一緒に散歩している気分で味わってください


「ブランデンブルグ」

 岩手の山山に秋の日がくれかかる

完全無欠な天上的な

うらうらとした180度の黄道に

底の知れない時間の累積

純粋無雑な太陽が

バッハのやうに展開した

今日10月31日をおれは見た

「ブランデンブルグ」の底鳴りする

岩手の山におれは棲む。

山口山は雑木山。

雑木が1度にもみじして

金茶白緑雌黄の黄、

夜明けの霜から夕もや青く澱で、

おれは3間4方の小屋にいて

伐木丁丁の音をきく。

山の水を井戸に汲み、

屋根に落ちる栗を焼いて

朝は1ぱいの茶をたてる。

3畝のはたけに草は生えても

大根はいびきをかいて育ち、

葱白菜に日はけむり、

権現南蛮の実が赤い。

啄木は柱をたたき

山兎はくりやをのぞく。

けっきょく黄大癡が南山の草蘆

王魔詰が詩中の天地だ。

秋の日ざしは隅まで明るく、

あのフウグのように時間は追いかけ

時々うしろへ小もどりして

又無限のくりかえしを無邪気にやる。

バッハの無意味、

平均率の絶対形式。

高くちかく清く親しく、

無量のあふれ流れるもの、

あたたかく時におかしく、

山口山の林間に鳴り、

北上平野の展望にとどろき、

現世の次元を突変させる。

おれは自己流謫のこの山に根を張って

おれの錬金術を究尽する。

おれは半文明の都会と手を切って

この辺陬を太極とする。

おれは近代精神の網の目から

あの天上の音に聴こう。

おれは白髪童子となって

日本本州の東北隅

北緯39度東経141度の地点から

電離層の高みづたいに

響きあうものと響きあう。

バッハは面倒くさい岐道を持たず、

なんでも食って丈夫ででかく、

今日の秋の日のようなまんまんたる

天然力の理法にに応えて

あの「ブランデンブルグ」をぞくぞく書いた。

バッハの蒼の立ち込める岩手の山山がとっぷりくれた。

おれはこれから稗飯だ。

(高村記念会、高村光太郎詩集より)