2019年1月31日木曜日

雪白く積めり

 こんにちは!!
高村光太郎記念館です。
大寒になり、寒さも厳しくなりましたね
光太郎はここ花巻の太田村山口に移り住んだ最初の冬(昭和20年12月)に「雪白く積めり」という詩を作りました。
今日は山荘の雪景色と一緒にこの詩をご紹介します。
    雪白く積めり

雪白く積めり。
雪林間の道をうづめて平らかなり。
ふめば膝を没して更にふかく
その雪うすら日をあびて燐光を発す。
燐光あをくひかりて不知火に似たり。
路を横切りて兎の足あと点々とつづき
松林の奥ほのかにけぶる。
十歩にして息をやすめ
二十歩にして雪中に坐す。
風なきに雪蕭々と鳴って梢を渡り
万境人をして詩を吐かしむ。
早池峯はすでに雲際に結晶すれども
わが詩の稜角いまだ成らざるを奈何にせん。
わずかに杉の枯葉をひろひて
今夕の炉辺に一椀の雑炊を暖めんとす。
敗れたるもの卻て心平らかにして
燐光の如きもの霊魂にきらめきて美しきなり。
美しくてつひにとらえ難きなり。
          「典型」より

岩手での 初めての冬の景色や、山荘での暮らしの一コマがありありと感じる詩です。

この套屋の中に光太郎が住んだ山荘が当時のまま保存されています。
是非冬の景色と一緒に光太郎の生活を感じ取っていただけたらと思います。
この詩は、記念館の朗読コーナーでも雪景色の画面と一緒に聞くことが出来ます。