2019年7月10日水曜日

新緑の頃

 こんにちは 高村光太郎記念館です。
紫陽花のきれいな季節になりました。紫陽花ロードを詩人の気分になって散歩するのはどうでしょうか?


 今年は雨も少なく、色も鮮やかです。

 もみじの花や桑の実もお出迎えしています
 今日はこの緑の森を見て「新緑の頃」という詩が浮かびましたのでご紹介します。

     新緑の頃
青葉若葉に野山のかげろふ時、
ああ植物は気良いと思う。
植物はもう1度少年となり少女となり
五月六月の日本列島は隅から隅まで
濡れて出たような緑のお祭り。
たとへば楓の梢をみても
うぶな、こまかな仕掛けに満ちる
小さな葉つぱは世にも叮嚀(ていねい)に畳まれて
もつと小さな芽からぱらりと出る。
それがほどけて手をひらく。
晴れればかがやき、降ればにじみ、
人なっこく風にそよいで、
ああ植物は清いと思う。
さういふところへ昔ながらの燕が飛び
夜は地虫の声さへひびく。
天然は実にふるい行状で
かうもあざやかな意匠をつくる。

            1940年5月6日作